俺様黒王子とニセ恋!?契約
それを見て、チクんと胸が痛む。
ああ、やっぱり橋本さんって……。


気持ちが落ち込んでいくのを感じながら、私は今度こそ頭を下げて、急いで会議室から出た。
廊下に足を踏み出した途端。


「バ~カ」


すぐ横からそんな声が聞こえて来て、私はビクッと身体を震わせながら足を止めた。
ドアの横の壁に、篤樹が腕組みして背を預けている。


「あつ……片桐さん!」


思わず声を上げてしまって、慌てて口を手で塞いだ。


「言えば良かったのに。片桐さんと付き合ってます、って」


からかい交じりのクスクス笑い。
私は反射的に篤樹を睨んだ。


「付き合ってない」

「やることやってんのに」

「っ……! そんなの、わざわざ自分からバラすことじゃないでしょう」


カッと頬が赤くなるのを意識しながら言い返すと、篤樹は、ハアッと深い息を吐いた。


「……どうするんだよ。あの子、近々俺に告って来るぞ」


軽くドアの方を見遣る視線から、私は顔を背けた。


「好きに返事すればいいじゃない。社内恋愛はしないから、セフレでいい?とか」

「澪がいるから、それも無理だな」


当然のように言われるから、思わずグッと言葉に詰まった。
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