俺様黒王子とニセ恋!?契約
「あの……なんで言い切れるんですか」


思い切ってそう訊ねると、静川先輩が目線だけを軽く上げて私に視線を返した。


「あ……篤樹先輩が、社内恋愛しないって」


慌てて繕うように言葉を足すと、静川先輩はゆっくり身体を起こして、スッと背筋を伸ばした。
さすがに弓道部の元部長だ。
そうしていると、篤樹に負けないくらい姿勢がいい。


「付き合ってはいないけど、ただの後輩以上の関係……ってとこかな。土足で踏み入るようで悪いけど、君の片思い……とか」


観察するだけで、全てを見破られてしまった気分だ。
私はただ、小さな声で、はい、と返事をするだけだ。


「今、彼と同じプロジェクトチームに入れてもらってるんです。……でも私……篤樹先輩に、邪魔になるって言われてしまって……」


唇を噛みながらそう呟くと、静川先輩は、はは、と苦笑を漏らした。


「アイツはほんと……どうしようもないよなあ。自分が大事にしてるものと向き合うと、鬼のように冷たくなるんだよね」

「でもそれは……それだけ彼が真剣だからで……」


私の返事を聞いて、静川先輩が何度か頷いた時、店員さんがテーブルに近付いて来た。
静川先輩の前にはブレンドコーヒー、私の前にはカフェオレのカップを置いて、一礼すると離れて行く。
< 73 / 182 >

この作品をシェア

pagetop