俺様黒王子とニセ恋!?契約
「……篤樹、私に『やるじゃん』って言ってくれたんです。悔しいこと言われても反論返せない私に、『俺といる時のお前の方がいいと思う』って……」


言いながら、堪えていた涙がジワッと目尻に浮かんでしまう。
私は慌てて指先だけで拭い取った。


「……篤樹が、君にそんなことを?」


全く意味を成さない私の言葉に、静川先輩が小さな反応を見せた。
私は一度鼻を啜ってから、静かに頷いた。


「篤樹がそう言ってくれたから……私、彼の言葉に励まされて。もっと一緒にいたかったから、本物じゃなくてもそばにいられる唯一の形を選ぼうって……」

「意外だな……。四宮さん。俺から見て、第一印象で、君はすごく大人しい子なんだろうな、って思うんだけど」


自他共に認める、私を象徴する言葉だ。


「よく言えば控え目。悪く言えば臆病。もちろん……それが唯一の形だとしても、その……遊びの恋愛なんか、普通なら絶対考えられないタイプ」


静川先輩の解釈にはなんの異論もなく、私は黙ったまま何度も頷いた。
それを確認して、静川先輩はフウッと息を吐いた。
そして、テーブルに肘をつくと、少しだけ身を乗り出して来た。


「四宮さん、篤樹の好みの女性のタイプって、知ってる? ……俺が守ってやらなきゃって思える子、なんだよ」

「え……?」


思わず何度も瞬きをする。
静川先輩の言葉は、ちょっと意外だった。
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