ビターな洋菓子店
「 慌ててないならこっち来て 」
奥から姿を現した響さんに 「 え? でもそこは厨房じゃ‥ 」 と答えると、
「 いいから。どーせ誰も来ないだろうし。あ、君以外はね 」
と、少しだけ口角を上げて微笑んだ。
「 あの‥、じゃあ、お、おじゃまします‥? 」
「 どーぞ 」
店内よりも更に甘い香りを充満させる厨房は、イメージしていたよりもずっと綺麗で輝いて見えた。
「 バースデーケーキって言ってたけど 」
はい、ここね。 と広げてくれた折りたたみ椅子に腰を下ろす。
「 はい‥‥。 誕生日なんです 」
「 誰の? 」
「 私の‥‥ 」
「 ふーん。 で? 誰かとパーティーでもすんの? 」
「 いえ、一人で‥‥‥ 」