ビターな洋菓子店


「 そりゃあ特別なのかもしれないけど。こんな台風の中血相変えてホールケーキ探し回るほどのものなのかなって 」

「 それもそうですけど‥‥ 」

「 まぁ価値観はそれぞれだけど 」

そう言って目の前に置かれた一つのケーキ。

「 ご希望のバースデーケーキじゃないけど。でも、特別がいいならこれ食ってみ 」


シンプルな白のスクエアのお皿に飾られたケーキは苺のタルト。
丸いタルト生地に溢れんばかりのキラキラ光る苺が乗っていて、いつも誕生日に用意するホールケーキよりも綺麗だと思った。

「 これは‥‥? 」

「 新作 」

「 新作? お店の 」

「 そ。未発売ってやつ 」


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