ビターな洋菓子店


ぐずぐずと止まらない涙を拭く事も忘れて一口、また一口とケーキを口へと運ぶ。サクッとしているのに固すぎないタルト生地も、甘すぎないカスタードも全てが特別で隣にいた響さんが笑っている事にも気にならなかった。

「 思うんだけど、」

「 ‥‥はいっ 」

「 売ってる側とすれば、例えケーキが雨に濡れようがどうでもいいわけ 」

「 えっ、でも‥‥ 」

「 そりゃ中には美味しく食べて欲しいって奴もいるかもしれないけど、俺は思わない。 売れりゃーいいわけ 」

「 はい‥‥‥ 」

「 だからケーキが特別じゃない。ましてやこの台風の中雨に打たれながら探し回るほどじゃねーの 」

「 ‥‥‥‥ 」

「 誕生日に風邪引いたら元も子もねーし 」

「 ‥‥‥‥‥ 確かに 」

「 要は気の持ちようってわけ。ま、そんな落ち込むな 」


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