ビターな洋菓子店


「 雰囲気も素敵だし、店員さんも素敵だわ 」

そう言って微笑む姿がとても優雅で、こういう人が洋菓子店には似合うんじゃないかと少しだけ胸がチクリと痛み、

「 あら? もちろんあなたもよ 」

そんな複雑な顔をしないで、とお客様に励まされ自分の不甲斐なさが更に大きくなった。


「 ありがとうございます 」

けれど、私には響さんが唯一出来ない笑顔をお客様に見せる事しか出来なくて、「 マドレーヌ、とっても美味しいのでお喜びいただければ幸いです 」と精一杯笑ってみせた。


「 そうなの? それは楽しみね 」


私よりも20センチ近く高い身長のお客様がショーケースに近づいた時、その近さと綺麗な瞳にゴクリ、と喉が鳴る。

「 マドレーヌも可愛い人も大好きなの 」

そう言ったお客様の妖美な表情は響さんとは違う魅力があって、私は笑顔を忘れただ見つめ合う事しか出来なくなっていた。



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