ビターな洋菓子店


「 響さんが響さんじゃない‥‥‥ 」

初めて目の当たりにした、響さんの紳士的な行動に驚きと感動が混じる。
素っ気ない、いつも上から、あげくの果てには突き放すといった店員とは思えないほど無慈悲な響さんがドアの前まで女性を見送ったのだ。

「 何言ってんだか 」

「 だって! ほら! あの女性 (ひと ) の為にそこまで行ってドア前でお礼するなんて‥‥ 」

これは私がbitterに来てからの大事件だ。

「 響さんも人の子だったんですね‥‥ 」

どんな女性に言い寄られても一切靡かなかった響さんでも、あの美女には ” 男 ” になったのかもしれない。
そうとしか考えられない私は一人、うんうん分かりますよ。美人でしたもんね、と納得した。




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