ビターな洋菓子店
いつもと違う着崩した姿に、あぁ、私はなにノコノコとケーキの事だけを考えてついてきたんだ。心の準備もなしに。と今自分のいる状況を把握した。
「 ‥えっと、あっ! これはあれですねっ! ‥‥ん? あれ‥‥‥あれ? 」
そう。
きっとここは響さんの自宅だ。
シンプルな家具や、お店のように几帳面に掃除された室内を見れば一目瞭然。大好きな響さんの試作品を持ちながら私はパニックに陥った。
「 知らねーのに知ったかぶろうとすんな 」
「 ‥‥だって‥‥タルトですか? 」
「 いや、パイ 」
「 パイ? 」
「 レモンパイ 」