ビターな洋菓子店
「 レモンパイ‥‥。 あっ! いただきます! 」
「 どーぞ 」と律儀に返事をしながら、キッチンに片付けをしに踵を返す響さんの姿をなるべく意識しまいとレモンパイを口へと運ぶ。
「 ‥‥‥‥っ! このフワフワ美味しい! 」
一見薄く焦げ目のついたフワフワは、表面が少しサクッとしていて何とも言えない酸味と甘さに自然と笑みがこぼれる。
「 これすっごく美味しいです! 」
見た目のシンプルさとは想像も出来ない味に私は何度も「 美味しい 」 と繰り返す。それが気に食わなかったのか否か、
「 お前のボキャブラリーの無さにびっくりだわ 」
と、隣に腰を下ろした。