ドルチェ セグレート
「アンサンブルをひとつ……それと……」

まずは当然ながら、決まっていたものを注文した。
トレーにそれが乗せられるのを確認して、次はどうしようかと思い悩む。

アンサンブルのことしか考えてなかったから、他はなにを頼もうか決めてなかった。
昨日の朝、ランコントゥルのケーキ食べ終わったばかりだし、今日はふたつにしておこうかな……。

「あと……フラワーフルーツをひとつ。以上で」

パッと目を引いたのは、イチゴやぶどう、みかんやキウイなどが散りばめられた丸型のケーキ。
花畑のように色とりどり飾られているものだから、そういう名称なんだろう。

なにを差し置いてもチョコレート系が好きな私だけど、昨日ガトー・オ・ショコラ食べてるし、アンサンブルもチョコ系だし。

ちょっと路線変えて、フルーツにしてみようと思い切る。

あんまり考えすぎると余計迷っちゃうし。
そうしたら、後ろで待ってるお客さんに迷惑掛かるし。

優柔不断な私は、注文し終えたというのにショーケースを端から端まで眺めては、『あれもよかったかな』なんて迷い続けてしまう。

さすがに、今から変更とか追加まではしないけど。

「お待たせ致しました。ありがとうございます。またお越しくださいませ」

透明のビニール袋に入れた白い小箱を渡される。
私はそれを受け取ると同時に、他のケーキへの浮気心を払拭した。

今日の一番の戦利品。早く帰ってコーヒーと一緒に食べたいところだけど……。


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