ドルチェ セグレート
職場を出ると、真っ直ぐに待ち合わせ場所へ向かう。
いつもなら、閉店時間までに間に合うようにと、髪を振り乱して走り出す勢いだろうけど今日は違う。
待ち合わせ時間が閉店時間後だから、普通に歩いても充分間に合う。
待ち合わせはランコントゥル。
約束の場所が彼の職場ということは、同僚の人に見られても差し支えないということだろう。
イコール、神宮司さんにとって、今回の約束は取り立てて大事な約束でもないということだ。
下心皆無だと再確認すると、安堵と共にほんの少しがっかりする自分がいた。
いや。なにを期待してたんだ、私は。大体、とっくに恋人とは言えないような冷めた関係だったとはいえ、彼氏と正式に別れたのはこの間のことなのに。
それを、こんな日の浅いうちに別の人……って。
ピタッと揃えて止めた、自分の爪先を見つめる。
「……いや。これは違う。そういうんじゃないし!」
混乱する感情を抑えるべく、敢えて口から言葉を吐き出した。
まだ、あの人について知らないことが多いし。
名前と職業と職場と、休みの日にスイーツ店回ってることと、律儀なところと……落ち着いた声を発するところ。
出会ったときのことを回想しながら、ひとつひとつ上げていく。
脳裏で思い出される神宮司さんは、最後に微笑んだ。
――突然、例えようがないくらいに、優しく笑うとこ。
「なにしてるの?」
そして、この声は時折ひどく、私の心拍数を上げる。
いつもなら、閉店時間までに間に合うようにと、髪を振り乱して走り出す勢いだろうけど今日は違う。
待ち合わせ時間が閉店時間後だから、普通に歩いても充分間に合う。
待ち合わせはランコントゥル。
約束の場所が彼の職場ということは、同僚の人に見られても差し支えないということだろう。
イコール、神宮司さんにとって、今回の約束は取り立てて大事な約束でもないということだ。
下心皆無だと再確認すると、安堵と共にほんの少しがっかりする自分がいた。
いや。なにを期待してたんだ、私は。大体、とっくに恋人とは言えないような冷めた関係だったとはいえ、彼氏と正式に別れたのはこの間のことなのに。
それを、こんな日の浅いうちに別の人……って。
ピタッと揃えて止めた、自分の爪先を見つめる。
「……いや。これは違う。そういうんじゃないし!」
混乱する感情を抑えるべく、敢えて口から言葉を吐き出した。
まだ、あの人について知らないことが多いし。
名前と職業と職場と、休みの日にスイーツ店回ってることと、律儀なところと……落ち着いた声を発するところ。
出会ったときのことを回想しながら、ひとつひとつ上げていく。
脳裏で思い出される神宮司さんは、最後に微笑んだ。
――突然、例えようがないくらいに、優しく笑うとこ。
「なにしてるの?」
そして、この声は時折ひどく、私の心拍数を上げる。