ドルチェ セグレート
「あの子。一流のバリスタ目指してんだって。だから、いつもラテアートの練習とかしてるらしい」
「あ、だからさっき、マスターが『喜んでる人がいる』って言ってたんですか?」
「そういうこと。さすがに廃棄は出来ないし、したくないんだろうし。飲むったってふたりじゃ限界あるだろうしな」
それを聞いて、もう一度目下のカップに視線を落とす。
この一杯を淹れるようになるために、毎日コツコツと努力を積み重ねてるんだ。
私より若そうなのに、すごいなぁ。
「あ、そーだ。マスター、これ、冷蔵庫入れといてくれます? 大きい方は、良ければ受け取って」
両手でそっとカップを持ち上げたときに、神宮司さんが空いた隣の座席に置いていた紙袋を手にする。
マスターがカウンターから出てきてそれを受け取ると、お礼を言って持って行った。
神宮司さんはおもむろにスプーンを手に取ると、綺麗な黄金の山にそれを沈ませる。
「いくら日々のこととはいえ、やっぱり廃棄は極力したくないんだよな。俺も」
「あ、もしかして……?」
今、渡した紙袋の中身にピンときて、カップを戻して顔を上げる。
彼は、内側が半熟になっている卵とチキンライスを頬張り、それを飲み込んだ後に言った。
「ま、個人経営のいいとこ。こんなふうに人に渡したり出来るのは」
そうか。やっぱりあの中身はケーキなんだ。
その行動はケーキ屋さんとして一般的に、いいのかどうかは私にはわからない。
だけど、私個人的にはそういう考え方は嫌いじゃない。
「ん? ていうか、今、なんて? もしかして、ランコントゥルの経営者って……」
「俺だけど」
「えっ……えぇーっ?!」
「あ、だからさっき、マスターが『喜んでる人がいる』って言ってたんですか?」
「そういうこと。さすがに廃棄は出来ないし、したくないんだろうし。飲むったってふたりじゃ限界あるだろうしな」
それを聞いて、もう一度目下のカップに視線を落とす。
この一杯を淹れるようになるために、毎日コツコツと努力を積み重ねてるんだ。
私より若そうなのに、すごいなぁ。
「あ、そーだ。マスター、これ、冷蔵庫入れといてくれます? 大きい方は、良ければ受け取って」
両手でそっとカップを持ち上げたときに、神宮司さんが空いた隣の座席に置いていた紙袋を手にする。
マスターがカウンターから出てきてそれを受け取ると、お礼を言って持って行った。
神宮司さんはおもむろにスプーンを手に取ると、綺麗な黄金の山にそれを沈ませる。
「いくら日々のこととはいえ、やっぱり廃棄は極力したくないんだよな。俺も」
「あ、もしかして……?」
今、渡した紙袋の中身にピンときて、カップを戻して顔を上げる。
彼は、内側が半熟になっている卵とチキンライスを頬張り、それを飲み込んだ後に言った。
「ま、個人経営のいいとこ。こんなふうに人に渡したり出来るのは」
そうか。やっぱりあの中身はケーキなんだ。
その行動はケーキ屋さんとして一般的に、いいのかどうかは私にはわからない。
だけど、私個人的にはそういう考え方は嫌いじゃない。
「ん? ていうか、今、なんて? もしかして、ランコントゥルの経営者って……」
「俺だけど」
「えっ……えぇーっ?!」