ドルチェ セグレート
今回の件は、特別問題。前向きどころか、超後ろ向き。
どうプラス思考に持って行こうとしたって、ちょっと無理がありすぎるような……。
「はぁ……」
仮に、本当に私が前向き思考だとして、だからといって、自分に自信があるとかそういう話はまた別問題。
どちらかというと、自分に自信なんてない方だ。
ダメだ。悪いことしか思い浮かばないし。
どんよりとした重いオーラを背負っていると、背後から声を掛けられる。
「今朝、河村さんが受けた電話での取り置きなんですけど」
「ああ。あのカードケースの?」
「はい。電話で言ってたものじゃないってことで、商品取り寄せになりました。発注お願いできますか?」
「えっ! うそ!」
今日の出来事だから、電話を受けたことはハッキリと覚えてる。
でも、確かにカードケースの種類はどう言っていたか、今ではうろ覚えだ。
「ごめんね……。伝票は? すぐに注文しておくから」
「お客さんもいい方だったので大丈夫でしたよ。でも、河村さんがこういうミス、珍しいですね?」
小首を傾げた志穂ちゃんに見つめられ、咄嗟に目を逸らしてしまう。
上に立つ者として、こんなミスや態度はいけないとわかっているけど、どうしてもだめだ。
「うん、気をつけなきゃ……」
すっかりと落ち込んでしまって、笑うことはおろか、顔を上げることも出来ない。
深い溜息を吐き、自己嫌悪に苛まれる。
そこに、この心境を全く無視したような、志穂ちゃんの華やかな声が耳に入ってきた。
「ところで、あれから慎吾さんとは会うことありました?」
「しっ……んごさん?」
まさか、ここでその名前が飛び出してくるとは予測もしてなくて、卒倒しそうになる。
懸命に平静を装った表情で立つけど、内心かなり混乱していた。
だけど、志穂ちゃんは構うことなく、しれっと声を潜めて人差し指を立てる。
どうプラス思考に持って行こうとしたって、ちょっと無理がありすぎるような……。
「はぁ……」
仮に、本当に私が前向き思考だとして、だからといって、自分に自信があるとかそういう話はまた別問題。
どちらかというと、自分に自信なんてない方だ。
ダメだ。悪いことしか思い浮かばないし。
どんよりとした重いオーラを背負っていると、背後から声を掛けられる。
「今朝、河村さんが受けた電話での取り置きなんですけど」
「ああ。あのカードケースの?」
「はい。電話で言ってたものじゃないってことで、商品取り寄せになりました。発注お願いできますか?」
「えっ! うそ!」
今日の出来事だから、電話を受けたことはハッキリと覚えてる。
でも、確かにカードケースの種類はどう言っていたか、今ではうろ覚えだ。
「ごめんね……。伝票は? すぐに注文しておくから」
「お客さんもいい方だったので大丈夫でしたよ。でも、河村さんがこういうミス、珍しいですね?」
小首を傾げた志穂ちゃんに見つめられ、咄嗟に目を逸らしてしまう。
上に立つ者として、こんなミスや態度はいけないとわかっているけど、どうしてもだめだ。
「うん、気をつけなきゃ……」
すっかりと落ち込んでしまって、笑うことはおろか、顔を上げることも出来ない。
深い溜息を吐き、自己嫌悪に苛まれる。
そこに、この心境を全く無視したような、志穂ちゃんの華やかな声が耳に入ってきた。
「ところで、あれから慎吾さんとは会うことありました?」
「しっ……んごさん?」
まさか、ここでその名前が飛び出してくるとは予測もしてなくて、卒倒しそうになる。
懸命に平静を装った表情で立つけど、内心かなり混乱していた。
だけど、志穂ちゃんは構うことなく、しれっと声を潜めて人差し指を立てる。