綺麗な薔薇には闇がある
気配を消して、その〝誰か〟を見ると


「……ぁ……」


晃が小さく声を漏らした


そこにいたのは、噂の張本人──さっきの女だった


晃の声は聞こえなかったのだろうか


彼女は俺たちには気付かずに、黙ってフェンスへと近づく


その時、風に乗って、彼女の声が微かに聞こえた


「……ごめん、なさいっ……

……私が殺してしまった……

私と関わった人を皆……みんな……」


は……? 殺した、だと?


彼女はフェンスに手をかける


……っ、まさか



「私が……死んだら……

あなたは少しでも、許してくれる……?

あなたの元へ、私は……行ける……?」


まずいっ!


彼女がフェンスの金網に足をかけた
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