綺麗な薔薇には闇がある
俺は梯子を急いで降りると、彼女に向かって走った



どうか……間に合ってくれ!!



彼女にあと一歩で辿り着く、というところで



彼女はフェンスから……両手を離した


彼女の体がゆっくり傾いていく



フェンスの外──宙へと



「待てっ!! ──ミキ!!」


そう叫んだ事に、自分でもわけが分からなかったが、今はそんな事どうでもいい


目の前の消えそうな命を、一刻も早く救わなければならないのだから



スローモーションのように、全てがゆっくりに見えた


彼女の動きもゆっくりだが


それとともに、自分の動きもとても遅く見えて、酷くもどかしい



彼女は落ちていく中で、目を見開きながら俺を見ていた───



最後の足掻きに、伸ばした俺の手は…………
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