綺麗な薔薇には闇がある
───突如、眩しい光に包まれた


固く目を瞑り、暫くしてから開いてみれば


『……夢が……切り替わっている……?』


そこは、何もない真っ白な空間だった



空と地の境界線は無く、

自分が立っているこの場所さえ、本当に地面なのかと疑ってしまうような、

違和感ばかりが漂う、不思議な空間



どれだけ辺りを見渡し、目を凝らしても

どれだけ息を殺し、耳を澄ませても

何も見えず、何も聞こえなかった



つい数秒前までこの目に映っていた、

愛しい彼の姿はどこにもなく、

夢だと分かっていながらも、

その残像さえ現れることはない



白……それは時に眩しく温かく、時に虚しく切ない色


この何もない世界に、

私だけが放り込まれ、閉じこめられ


底知れぬ哀情と、恐怖に襲われた
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