ストーカーは昼夜を問わない
自分の方が痛めている腰を打って痛いだろうに、なんて優しい人なんだろう。
やっぱりまだまだ言い足りない!
キッと領主に突進して行こうとしていたら、後ろから取り押さえられた。
そうだった。口を塞がれたままだったんだった。
いい加減離してくれないかな?ダメ?
見上げて公爵サマに目で訴えても無駄だった。
「もうしばらくいい子にしてなさい。....あぁ、そうそう。君を領主の任から解くよ。確か弟がいたね。彼が次の領主だ」
「なっ!」
それまで成り行きを見守るように静かだった領主、いや、もう公爵サマに辞めさせられたから、元領主サマか、その元領主サマが吠えた。
「いくら貴方が公爵閣下とはいえ、領主をそう簡単に辞めさせることなどできないはず!」
「そうだね。でも、王族だとそれが自由に行えるんだよ。エドウィン様、この者を公爵家に無礼を働いたとして、領主の任から解くことをお許し願えますか?」
「え?エドウィン様というのは...王太子殿下っ!?」
先ほどから元領主サマの言葉には皆驚かされてばかりだ。
てっきり公爵様の従者とばかり思っていた怪しい全身フードつきの長いローブを着ていた何者かはこの国で国王様の次に偉い方だった。
お婆ちゃんなんて驚きで気絶しそうになっている。
「あぁ、構わないよ。ユアンが決めたことならね」
「ありがとうございます。....そういうことだから。君の父上には改めて僕から封書を送るよ」
「.....な、なんで...なんで俺がこんな目に...」
元領主サマは頭を抱え、地面にへたりこんでしまった。
ここで困るのが自分が仕えていた主が突然領主でなくなった従者達。
みんな困惑しながらも、一応勤めを果たす気はあるのか、その中でも体格のいい二人が元領主に肩を貸しながら連れ帰っていった。