ストーカーは昼夜を問わない
「君はここに残りなさい」
おっとー?やっぱり?
そうですよねー?この二人が騒動が終わってまでここに残る理由なんて一つしかないじゃありませんか。
「.....今回も拒否権はなさそう」
「ん?拒否権?」
どうやら拒否以前の問題だったらしい。
彼らは生粋の上流階級。断られることすら念頭に置いていなかった。
「いーえ。なんでもありません。.....それで?ボクに何をお聞きになりたいんです?」
自体の把握力は悪くないはずだ。
その証拠に、今まで幼い子供を見る目だった二人の目つきが明らかに変わった。
「.....へぇ。魔力を吸い取ってくれるだけでなく、頭も悪くないようだね」
「お褒めいただきまして、ありがとうございます。でも、ボク、魔力を吸い取る?そんな力があるなんて知らないんですけど」
「そこで謙遜しないなんて、君、結構イイ性格してるねぇ。でも、僕、そういうの嫌いじゃないよ」
「ユアン。そんなことよりも、魔力の話」
「あぁ、そうだったね。君、僕達と一緒に王都で暮らさない?」
「嫌です」
速攻で答えてやった。
王都?そんなとこ行ってなにすんのさ。
.....ていうか、本当に今更だけど、あのピエロ、私をなんのためにこっちに飛ばしやがったんだろう。
あぁ、あの顔と声を思い出しただけでペンくらいなら折れそうな気がする。
お婆ちゃんに怒られるからしないけど。
「うーん。断られると困るんだよねぇ」
「ボク、知らない人について行っちゃいけないって言われてるんで」
「知らない人じゃないだろう?さっきまでさんざん話してたじゃないか」
「出会って一時間も経ってない人ってやっぱり知らない人だと思うんです。それに、おばあ..シスターの手伝いもあるし」
「それなら、こういうのはどうだい?君が僕達と一緒に来てくれる代わりに、この教会と孤児院を綺麗にして、もっと皆が暮らしやすいところにしよう。後、これだけ子供達がいるんだから、人を寄越すよ。どうだい?悪い話じゃないだろう?」
「ふむ」
確かに悪い話じゃない。
それだと皆、なによりお婆ちゃんは随分と楽になれるだろう。
「そんな...人身売買ではありませんか」
「お婆ちゃん、ボク、別に気にしないよ?皆がおいしいごはんをおなか一杯毎日食べられて、たくさん遊べて、たくさんお勉強できて、シスターの仕事も分担して減らしてもらえて、なおかつこの教会と孤児院が綺麗になってとても住みやすくなって、あぁ、二人一部屋くらいにはなって、後、お風呂がついて....とりあえず、皆が元気に過ごせるんなら。ねぇ、公爵サマ。そうしてくださるんでしょう?」
「もちろんだよ」
さらりと公爵サマが言った言葉に要求を付け加えたけど、さすがは公爵。
全く動じなかった。ちっ。もっと付け加えればよかった。
別にこれが永遠の別れにはならなさそうだし。
そんな深刻に考えることないと思うんだよね。ある種の出稼ぎみたいなもんでしょ。
なにせここはこっちの世界での私の故郷かつ実家。
なにかあれば伝家の宝刀”実家に帰らせていただきます”だよね。