ストーカーは昼夜を問わない
「じゃあ、決まりだね。急だけど、今から王都に戻るんだ。準備をすぐにできるかい?必要なものはあちらでそろえるから、大切なものだけで構わないよ」
「分かりました。十分くらいください」
椅子から降りて、私に割り当てられた部屋に向かった。
年齢順に分かれている部屋の中には誰もいなかった。
大切なものかぁ。あっちのものは全く持ってきてないから、こっちでもらったものなんかなんだよねぇ。
何かいれるものはっと...あったあった。
丁度次のゴミの日に捨てようと思っていた箱があった。
それにどんどん荷物を詰めていくと、扉の向こうが騒がしくなった。
「おい!お前、ここを出ていくのか?」
「そうだよ。ちょっと王都まで」
「...そんな、隣村に行ってくるみたいなノリで...」
「いっちゃやだよー!」
「そうだよ!リオがいなくなるなんてやー!」
「たまには帰ってくるよ?」
「や!」
年長者はカインだけど、皆のこのごろの世話をしていたのは私。
だから、特に私よりも小さい子達は終いには泣き出して駄々をこね始めた。
もうすぐで約束の十分だ。
「みんな、お土産はなにがいい?王都にはとっても珍しいものがあるらしいよ?それこそあまーいお菓子だったり、シェリー達が好きなお姫様のアクセサリーだったり」
「お、お土産?」
「おかし?」
「うん。とりあえず、ボク、もう行かなきゃだから、皆でお手紙書いてよ。それ見て次に買ってくるから」
「うー」
「ミヤ、まだ、じ、かけない」
「ぼくも」
「ならちゃんとお勉強してからね。ボク、待ってるから」
「ぜったいだよ?」
「うん。約束だよ」
ねだられて子供達一人一人と指切りした。
嘘をついたら針千本じゃなくて、シスターのお説教を一日中聞かされるそうだ。
なんだそれ、針千本より現実的で怖い。
そしてなにより針より怖いはシスターのお説教って思考も面白い。
公爵サマ達に連れられて教会を去る間際、カインが駆け寄ってきた。
「お前の分までこいつらの面倒は俺がみてやるよ!」
「....うん。よろしくね」
「おう!」
やだ。ちょっとジンってきちゃったじゃないか。
公爵サマが地面に描いた魔法陣の中に入り込むと、私達三人の身体は光に包まれた。
「ちょっと慣れないと酔っちゃうかもしれないけど、我慢してね?」
「はい。それじゃあ、みんな、行ってきます」
バイバイと手を振ると、みんなも手を振り返してくれた。
そして私はあることに気付いた。
転移魔法陣とか便利なものあるんだったら、通いでもいけたんじゃね?
思わず私を抱えている公爵サマの方を見るとにっこりと微笑まれた。
確信犯ですか、そうですか。......この野郎。