ストーカーは昼夜を問わない
思わず瞑った目を開けた時、そこは"無"だった。何もない空間。
どこまでもどこまでも同じ景色が続いている。
「ここは...あの世?」
「違いマース」
「ひっ!...びっくりしたぁ」
そんな空間に、さっきまでは確実にいなかった人物が突然現れた。
ピエロの恰好をした奴。
顔は仮面で隠していて分からないけれど、声と高い身長からしておそらく男だと思う。
「ここはワタシが趣味で作った世界デース」
「...はぁ」
「アナタには、これからある世界に転生していただきマス。もちろん!これは現実であり、こちらのアナタはつい先ほど死にマシタ」
死んだ、ということには何の疑問もない。
そうだろうなとも思う。
だって大型トラックに轢かれればまず間違いなく死ぬ。
真正面だったし。願わくばあの運ちゃんが変に思いつめないで欲しい。
あれは全面的に私が悪い。
横断歩道を渡るのを面倒くさがって細い路地だからと突っ走った結果だ。
別に子供を助けてとかそういう感動的な理由なんてどこにもないから本当に申し訳ないことをした。
で、だ。
目の前のピエロはなんだろう?
いきなり現れるわ他の世界に転生だわ、頭おかしいんじゃないのか?
あれか、漫画や小説やら異世界ものが流行っている今流行に乗って異世界に実際に行ってみようってか?
やめてくれよ、切実に。
「そういうのは他の奴で...
「ちなみにアナタに拒否権というものは欠片も用意されてオリマセーン」
「..........」
欠片もって....しかも妙にカタカナなのが余計腹立つ。