ストーカーは昼夜を問わない
「あ、あなたは....公爵閣下っ!?」
公爵?はて、そんな高いご身分のお方がどうしてここにいて、私の口を塞いでいるんでしょうか?
領主サマの慌てようは半端ない。
それもそうか。誰だって想定できないもの。
「君は随分と口が立つ。困った子猫ちゃんだねぇ」
「むがっ」
「おっと、ごめんよ。もうしばらくこのままでいてくれるかい?」
「.....むー」
なんか分からないけど、この公爵とやらならこの事態をなんとかしてくれる気がする。
少なくとも教会を壊すなんて暴挙は止めてくれるはずだ。
コクコクと頷く私に公爵サマは満足したのか笑顔でもう片方の手で私の頭を撫でてきた。
「お利口さんだね。.....それで?君は確か...新しく領主になった者だね?名は...」
「ベルンと申しますっ!」
自分を公爵に売り込むいい機会だと捉えたのか、領主サマは勢いよく前のめりになって答えた。
公爵サマはそんな領主サマを見て、深く溜息をついた。
「僕は使えない領主を自分の配下に置くつもりはないよ。まだ君の父上は使える男だと思ってたんだけどね。僕もまだまだ若かったよ」
領主サマは公爵サマが言った意味をしばらく考えていた。
その間に公爵サマは私の口を覆ったまま、私を抱え、お婆ちゃんの元へと歩み寄った。
「大丈夫かな?すまなかったね、私がいたらないばかりに」
「い、いえ。いいえいいえ。公爵様は何もお悪くなどありません。それよりもリオ、ケガはないかい?どこにも?」
「うー」
口を塞がれてるせいでうなり声のようなものしか出せない。
これじゃあ、ケガがあることを肯定してないか?
先ほどと同じくコクコクと頷いた。
それを見て、ようやくお婆ちゃんは安心したのかホッと息を吐いた。