太陽と月の行進曲
月
聖美と勇樹
*****
加藤聖美の朝は、まず、玄関前のポストから新聞を取り込むところから始まる。
高校二年生になる聖美がそうしていると、近所の人からは「若いのにえらいわね」などと言われる。
別に褒められたい訳ではなく、まして好きでやっている訳でもないが、それが幼い頃からの習い性になっていた。
姉はいつもギリギリに起きてくるし、父はいつも書斎に転がっているので、必然と聖美がそういう事を担うようになっている。
母は……数年前に他界していた。故に、朝食を作るのも、弁当を作るのも聖美の仕事だ。
「お父さん。朝ご飯できたよ」
書斎をノックして扉を開ける。
運がよければ父は起きている。
運が悪ければ…蔵書の山に埋まっているはずだ。
父は大学で考古学を教えている。
教えているといっても、ほとんど大学にはいない。
大体はどこか外国の発掘チームに混じって働いていて、一年の数ヶ月でも家に居ればいいほうだ。
「ん~…」
駄目だ。聖美は諦めて首を振った。
こういう時の父を起こすのは一苦労する。
書類なのか、なんだかよくわからない紙の下敷きになって、なにやら寝言を言っていた。
しょうがないので一人で朝食の席に着く。
姉の聖子は、朝起こすと怖い。だからいつも起こさない。
そのうちバタバタと起きてきて、弁当片手に出社するのが関の山だ。
淡々として静寂。それが聖美の毎日で、それが嫌だとは思わない。
朝食を食べ終わり、食器を洗っているときに、聖子がやはりバタバタと二階から降りてくる。
「あ~!! 遅刻する!!」
ひと言と叫んで風呂場に飛び込むと、悪態をつきながらシャワーの音が聞こえてきた。
加藤聖美の朝は、まず、玄関前のポストから新聞を取り込むところから始まる。
高校二年生になる聖美がそうしていると、近所の人からは「若いのにえらいわね」などと言われる。
別に褒められたい訳ではなく、まして好きでやっている訳でもないが、それが幼い頃からの習い性になっていた。
姉はいつもギリギリに起きてくるし、父はいつも書斎に転がっているので、必然と聖美がそういう事を担うようになっている。
母は……数年前に他界していた。故に、朝食を作るのも、弁当を作るのも聖美の仕事だ。
「お父さん。朝ご飯できたよ」
書斎をノックして扉を開ける。
運がよければ父は起きている。
運が悪ければ…蔵書の山に埋まっているはずだ。
父は大学で考古学を教えている。
教えているといっても、ほとんど大学にはいない。
大体はどこか外国の発掘チームに混じって働いていて、一年の数ヶ月でも家に居ればいいほうだ。
「ん~…」
駄目だ。聖美は諦めて首を振った。
こういう時の父を起こすのは一苦労する。
書類なのか、なんだかよくわからない紙の下敷きになって、なにやら寝言を言っていた。
しょうがないので一人で朝食の席に着く。
姉の聖子は、朝起こすと怖い。だからいつも起こさない。
そのうちバタバタと起きてきて、弁当片手に出社するのが関の山だ。
淡々として静寂。それが聖美の毎日で、それが嫌だとは思わない。
朝食を食べ終わり、食器を洗っているときに、聖子がやはりバタバタと二階から降りてくる。
「あ~!! 遅刻する!!」
ひと言と叫んで風呂場に飛び込むと、悪態をつきながらシャワーの音が聞こえてきた。
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