太陽と月の行進曲
勇樹は『あ~…』と呟いて頭を抱え、奈々もこの様子に吹き出した。

「なんだよ?」

勇樹にじろりとにらまれても、奈々は気にした様子もなく笑っている。

「この子に言ってもムリムリ」

軽く手を振られて、勇樹はムッとして唇をすぼめた。

それから、しばらく何かを考えるように天井を眺め、ガバッと立ち上がると勇樹は聖美を力強く指差した。

「お前ちゃんと呼ばないと、俺、返事しないからな!!」

聖美はポカンとして、奈々は爆笑する。

「あんた。それは極端でしょう?」

「うるさいっ! もう決めた!」

そう言うと、勇樹は席に戻っていった。

聖美にはわからない事だらけ。

年頃の男の子は難しい。聖美はそう思うしかない。

「あんたも天然だよね」

奈々に言われて、本当に首を傾げる。
天然というよりも。これが聖美の普通なので比べることもない。

「面白いもんも見たし、次、女子は保体だから行こっか?」

「うん」

今日は女子だけ集められて、保健体育のビデオを見るらしい。

「きっと性教育のなんたらってビデオでしょ」

奈々のズケズケした口調に聖美は笑ってしまう。

「ちょっと卑猥で嫌だよねー」

奈々の言葉を聞きながら、聖美が考えていたのは花の受粉のビデオだったので、なんとも曖昧に頷いた。
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