太陽と月の行進曲
「ゆ、有言実行するんだね」

「お前も勇樹って呼べよ?」

「えー……」

「エーじゃない!!」

それからまた二人で笑った。

ひとしきり笑って、それからお互いに首を傾げて難しい顔をする。

「……にしても、制服で行くとこったら、限られてるよなぁ」

「いつもどうしてるの?」

「ん? 俺はいつも家帰って寝てる」

勇樹はわざとらしく難しい表情をつくり、聖美の制服姿を眺めた。

「さすがにスカートじゃ、二階の屋根を上って俺の部屋にってわけにもいかないだろうなぁ」

「それ。むり」

「お前、その片言の日本語どうにかならないか?」

片言で話をしているつもりもないのだが、急いで話しているつもりはある。
言葉を急ぐと、短い単語しか飛び出してこないのが聖美だ。

「……努力はしてる」

むぅっとふてくされた聖美に、勇樹は肩を竦める。

「そっか。ならいいんだ」

どうやら譲歩してくれたらしい、そう感じて聖美は少しほっとした。

とにかく考えるのを勇樹に任せてばかりいては申し訳ない。どこか暖かい場所で、大丈夫そうな場所を聖美も考えてみる。

考えてみなくても、聖美の行動範囲などは決まっているのだが、思い付いたその場所は、ちょうど良い場所のような気がした。

「うちにくる? きっと父さん、研究で書斎から出てこないよ」

勇樹は聖美の言葉に少なからず悩んでから、何かに思い当たったようだ。
< 16 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop