太陽と月の行進曲
「お前んちの親父さんって、考古学の学者様だっけ?」

「うん。運が悪ければ、起きてる」

今朝の様子からすると、寝ていることの可能性は高いが、あくまで可能性に過ぎない。

どちらかわからないが父は少し変わったところがあるから、見つかっても問題ないとも思えた。

「……行ったら、親父さんに見つかって怒鳴られる?」

恐る恐ると聞いてきた勇樹に、聖美は首を振りながらはカバンを持ち直す。

「ううん。きっと化石について熱く語られるよ」

二人で駅に向かいながら、何故かツタンカーメンの話で盛り上がり、それから静かに電車に乗る。

「なんか、人と帰るの久しぶりだ」

勇樹がポツリと呟いて、ゆっくりと流れていく外の風景を眺めていた。

昼間の電車は空いていて、窓からの景色もよく見える。

住宅街も多いが、それなりに栄えてもいるから小さなビル群も視界に入った。

それを同じように眺めてから、聖美は勇樹を横目で見る。

「いつも友達と一緒じゃないの?」

「俺、いつもは部活あるし。一緒なのは朝くらいだよ」

部活と言われても聖美にはわからない。勇樹と会話をすることが、今までは本当に無かったんだと改めて感じた。

「なんの部活しているの?」

「一応、バスケ部なんすけど」

呆れたように振り返られて、聖美はそっぽを向く。

「知らなかったんだ?」

知りませんでした。そう正直に言ってしまっていいものか迷ってしまう。

それは“今まで興味はありませんでした”と言っているのも同然だからだ。

「ま、いいか。じゃ、これから話せばいいじゃん?」

「努力する」
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