太陽と月の行進曲
聖美がもじもじしていると、勇樹は吹きだした。

「な、なによぅ!」

「や。可愛いなと思って」

可笑しそうにしている勇樹を聖美はじっと眺める。

大人しい聖美ではあるが、何も見ていないわけでも、感じないわけでもない。

「今の笑いは違う! きっと違う!」

「でも、話すのに努力が必要ってどうよ?」

「勇樹くんもうちの家族に会えば判る」

聖美が言うと、勇樹はいきなり顔を真っ赤になった。

「……熱でもあるの?」

何気なく聖美が顔を覗きこむと、勇樹がバッとカバンを盾にして、あからさまに聖美から顔を背けた。

「ちょっ、こっち見るな!」

聖美は瞬きしてから、クリッと前方を見る。

本当に男の子は難しい。聖美がそう考えているとき、勇樹は咳払いをして姿勢を正した。

「その、なんだ……。思ってたより名前呼ばれるのって照れるな」

そう言われて、聖美も顔を赤くする。

お互い顔を赤くしたままそっぽを向いて、気がつけば下りる駅についていた。

また手を繋いで、人もまばらなホームに降り立つ。

「お前のうちって、俺んちとは逆?」

「こっち」

手を引くと、勇樹は苦笑しながらついて来た。
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