太陽と月の行進曲
「なんだ。全然、逆ってわけじゃねぇじゃん?」

「あれ? でも、小学で一緒の帰りにはならなかったよね?」

「あー……小1の集団下校の話?」

低学年の時には、6年生のお兄さんお姉さんと一緒に帰るのが普通だった。

その時にはクラスも関係なくなり、同じ方向の子供たち、それだけで行動する。

「うん」

「そりゃお前、小学校からだと、お互いに逆方向だったんじゃ?」

「そうなの?」

考えてみても、勇樹のうちがどこにあるのか見当もつかない。

考えている聖美に笑いながら、勇樹は指をくるくると回した。

「俺んち小学校の近くだし」

「そうなんだ」

ならば駅からだと方向的には同じだ。

納得して聖美は頷く。

「思えば狭い町だよなぁ」

「そうかな?」

「ああ」

勇樹は短く呟いて、それからまたくっと唇の端を上げ、楽しそうな表情を聖美に向けた。

「今、なんか会話になってるな」

「え?」

「学校じゃ、お前、あんましゃべらないじゃん?」

「や。話すタイミングが……」

なかなか合わなかっただけで、心の中で返事はしている。

「このテンポだと話せるか?」

「うん」

「じゃ、気をつけるかな」

「うん」

頷いてから聖美はふわっと笑った。

聖美のテンポに合わせてくれる人はかなり少ない。勇樹の言葉がとても嬉しかった。
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