太陽と月の行進曲
それから家について鍵を開けると、そっとドアを開けた瞬間に、父が書斎から出てくるところに出くわしてしまう。
まずい、と一瞬、聖美は思った。
「聖美? お前、どうしたんだこんな時間に?」
「うん」
「具合でも悪いのか? それともサボりか?」
「えーと……」
「サボりだな? 仕方がない子だ」
そう言いつつ、聖美の後ろにいた勇樹に気がついて、父はしかつめらしい表情から一変して破顔した。
「なんだ? 聖美の彼氏か? そんな所にいないで上がりなさい。風邪をひくぞ。さ、早くしなさい」
これには勇樹もポカンとした。
何事もなかったかのように、キッチンに入って行く父を眺め、聖美を見下ろす。
「お前んちの父さん、けっこう変わってるな?」
「や。聞かれても困る」
二人で玄関にいるのも何なので、とりあえず勇樹をリビングに案内して、聖美はお茶を淹れに立った。
「勇樹君。甘いもの、食べれる?」
「あんま気にしなくていいぞ?」
「や。きっと……」
言いかけたそのとき、父が大きなクリームたっぷりのホールケーキを持って入ってきた。
それを何も言わずに切り分けて、当然のように勇樹の前に皿を置く。
「さぁ、食べたまえ! 私の自信作だ」
勇樹は目を点にして、父と目の前のモノを見比べる。
「考えるためには人間糖分が必要だ! さぁ、男の子は遠慮しないで食べなさい」
「ケーキ作りが父の趣味なの」
聖美がおずおずと言うと、勇樹は軽く吹きだした。
まずい、と一瞬、聖美は思った。
「聖美? お前、どうしたんだこんな時間に?」
「うん」
「具合でも悪いのか? それともサボりか?」
「えーと……」
「サボりだな? 仕方がない子だ」
そう言いつつ、聖美の後ろにいた勇樹に気がついて、父はしかつめらしい表情から一変して破顔した。
「なんだ? 聖美の彼氏か? そんな所にいないで上がりなさい。風邪をひくぞ。さ、早くしなさい」
これには勇樹もポカンとした。
何事もなかったかのように、キッチンに入って行く父を眺め、聖美を見下ろす。
「お前んちの父さん、けっこう変わってるな?」
「や。聞かれても困る」
二人で玄関にいるのも何なので、とりあえず勇樹をリビングに案内して、聖美はお茶を淹れに立った。
「勇樹君。甘いもの、食べれる?」
「あんま気にしなくていいぞ?」
「や。きっと……」
言いかけたそのとき、父が大きなクリームたっぷりのホールケーキを持って入ってきた。
それを何も言わずに切り分けて、当然のように勇樹の前に皿を置く。
「さぁ、食べたまえ! 私の自信作だ」
勇樹は目を点にして、父と目の前のモノを見比べる。
「考えるためには人間糖分が必要だ! さぁ、男の子は遠慮しないで食べなさい」
「ケーキ作りが父の趣味なの」
聖美がおずおずと言うと、勇樹は軽く吹きだした。