太陽と月の行進曲
「じゃ、遠慮なく頂きます」

フォークを手にしてケーキを一口食べ、勇樹は目を丸くする。

「うまい。店よりうまいっすよコレ。あ、いや、このケーキ」

その言葉に父は満面の笑みをこぼし、自信みなぎる様子で偉そうに頷いた。

「そうだろう? だが悲しいかな、滅多に焼かない」

焼かないというよりは焼けないのであろう。

普段の父は土と埃にまみれている。

どうやら勇樹は甘党で、父とも気があったらしく、それとなく話し始めた考古学の話に夢中になりだしたので、聖美はそっと台所に向かった。

銀色のケトルに水を入れ、火にかける。

紅茶がいいかコーヒーがいいか思案して、紅茶を出すことにした。

聖美が三人分のお茶を用意してリビングに戻ると、すっかり父の演説会になっていて、身ぶり手振り最近発見され、まだ調査中の遺跡の事を熱弁していた。

勇樹の隣のソファに腰掛けて、ティーポットからお茶を注いでいると、彼はちらっと聖美を見る。

「お前が無口なのがよくわかる気がする」

聖美の家族はかなりおしゃべりだった。

いつも話はぽんぽん進んでいくので、聖美は黙って聞き役に回っているのが常だ。
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