太陽と月の行進曲
「……考古学の話なんて、面白い?」

高校生の男子が、興味津々に聞く話には思えない。

懐疑的な視線を向けると、勇樹はわざとらしく目を見開いて微笑んだ。

「インディジョーンズみたいで面白いよ。お前の親父さん話すの上手い」

そういうものかと納得して、聖美も自分の分のケーキを切り分ける。

聖美はあまり考古学に興味はないし、実際に家にもそれらしいものはない。

記憶にないが、幼い頃、父がお土産にと持って帰って来た原住民のお面やら、木彫りの人形やらに、聖美が大泣きしたらしい。

それ以来、家にその手のモノを父が持って帰ってくることはなくなった。

ケーキを一口食べ、聖美は少し眉を寄せる。

その様子に父が気がついた。

「なんだ。甘すぎるか?」

「うん」

「大丈夫だ。コレくらいの糖分なら考えているうちに消費するぞ! 学生なんだから、もっと糖分を摂って勉強しなくては! 現に彼も平気じゃないか。お前は味の好みがうるさい」

指差されて勇樹も笑う。というか、笑うしかないだろう。

「面白いなぁ。お前の親父さん」

小さな呟きに聖美も笑った。

そうしているうちに時間は過ぎ、食べ終わったケーキの皿を後片付けとしていたところで聖子が帰ってきた。

「玄関に、サッカーシューズがあったけど、誰か来てるの?」

台所に直接顔を出すのは姉のくせだ。

「お帰り。早いね」

「うん。今日は早く終わったから残業なし! で、誰が来てるの?」

ついでにお茶を淹れに立っていた聖美は振り返り、勇樹のことをなんと説明しようか思案した。

聖子はその様子を勝手に推測してニヤリと笑う。

「ああ。やっと彼氏が出来たの? どれどれ、お姉様が検分してやろう」

そう言ってリビングに向かった。

お茶は4人分だな。聖美が用意してリビングに戻ると、姉と勇樹が大きな声で言い争っているとことに出くわした。
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