太陽と月の行進曲
言われて、今度は聖美がポカンとする。

性教育のなんたらというビデオを見させられる年頃だ、高校生でそういう経験する人もいるだろう。

と、思い当たって、慌てて首を振り、相手が電話だったことを思い出して声を上げる。

「そ、そそそんなことしてないよ!! 家に父さんいたし!!」

『あ。おじさん居たんだ。って、それじゃあ、それこそ何してたのよ』

不思議に思うのももっともだ。

「何って、ケーキ食べて、父さんの話聞いてた感じ?」

『えぇ!? あの演説を二人で聞いてたの!?』

聖美はいつもの事なので聞き流していたが、勇樹は真剣に、それよりも楽しそうに聞いていたと思う。

「うん。結構、楽しいって言ってた」

『そりゃ、珍しいね』

聖美もそう思いながらも、奈々が珍しがるのも理解できてしまうなら頷く。

「それから、姉ちゃんと喧嘩してた」

『ああ。そりゃわかる気がするなぁ』

しみじみと納得している様子の声音にクスクス笑った。

「で、夕飯食べていった」

『さぞかし喜んでいたことでしょう』

「うん。美味しいっていってた」

また、溜め息が聞こえる。

『どうして、付き合うことになったの?』

「うん?」

『だって、あんたたち別に教室で話してる風でもないし』

聖美は今朝のことを考えながら首を傾げる。

確かに会話らしい会話もしたことがない。それは間違いない。
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