太陽と月の行進曲
太陽
メールとメール
*****
勇樹はスマホを持ちながら顔をしかめる。
鳴っているのは話中の『ツー・ツー・ツー』という話中音だけ。
「あー……。誰と話してんだよ!」
ブツブツ言いながら目の前の目覚まし時計を見て、22:40をさすデジタル時計に肩を竦めた。
23時になったら電話をかけない。
それは木村家の鉄則だ。下手に電話をしていると、母親が部屋まで怒鳴り込んでくる。
だから、その前に聖美の声が勇樹は聞きたかった。
「おやすみくらい、いいじゃないか」
正確には、聖美の家を出る時に言ってもらっている。言ってもらっているから、いいと言えばいい。
だが、やはり自分の自室にいる時に言ってもらう『おやすみなさい』はやっぱり違うと思う。
それが勇樹の考えだった。
「……しょうがないか」
頭を切り替えて、メールにした。
晩ご飯のお礼と、ある意味で弁当の催促。それを送信して、勇樹は布団に寝転がった。
自営でやっている銭湯の二階の東側、四畳半の少し古ぼけた部屋。
それが勇樹の部屋だった。
ほとんど使われていない勉強机には意味不明な雑誌が積みあがり、本来違う用途として買い与えられたカラーボックスの中には、ゲーム機とゲームソフトが並び、その上にはテレビがあった。
それからチラッと足元を見る。
小さな衣装ダンスと無造作に置かれた制服、それからバスケのユニホーム。
天井は、仲間が来るとタバコを吸うので、少し黄ばんでいる。もちろん母親にバレてはいけないAVは押入れの奥。
それを見て、ちょっと苦笑した。
勇樹はスマホを持ちながら顔をしかめる。
鳴っているのは話中の『ツー・ツー・ツー』という話中音だけ。
「あー……。誰と話してんだよ!」
ブツブツ言いながら目の前の目覚まし時計を見て、22:40をさすデジタル時計に肩を竦めた。
23時になったら電話をかけない。
それは木村家の鉄則だ。下手に電話をしていると、母親が部屋まで怒鳴り込んでくる。
だから、その前に聖美の声が勇樹は聞きたかった。
「おやすみくらい、いいじゃないか」
正確には、聖美の家を出る時に言ってもらっている。言ってもらっているから、いいと言えばいい。
だが、やはり自分の自室にいる時に言ってもらう『おやすみなさい』はやっぱり違うと思う。
それが勇樹の考えだった。
「……しょうがないか」
頭を切り替えて、メールにした。
晩ご飯のお礼と、ある意味で弁当の催促。それを送信して、勇樹は布団に寝転がった。
自営でやっている銭湯の二階の東側、四畳半の少し古ぼけた部屋。
それが勇樹の部屋だった。
ほとんど使われていない勉強机には意味不明な雑誌が積みあがり、本来違う用途として買い与えられたカラーボックスの中には、ゲーム機とゲームソフトが並び、その上にはテレビがあった。
それからチラッと足元を見る。
小さな衣装ダンスと無造作に置かれた制服、それからバスケのユニホーム。
天井は、仲間が来るとタバコを吸うので、少し黄ばんでいる。もちろん母親にバレてはいけないAVは押入れの奥。
それを見て、ちょっと苦笑した。