太陽と月の行進曲
「何故?」

「普通、そんなこときかないっしょ?」

聖美は反対側ホームの屋根を見ながら考えた。

そうかもしれない。
普通ならばそんなことは聞き返さない。
でもそれならば、唐突に告白されるのも普通ではないと思える。

瞬きを繰り返していた時、ホームに電車が入ってきた。降りる人と乗る人が交差する。
とりあえず、いつも通りに聖美も人の波にまぎれて電車に乗ろうと歩きかけ、唐突に腕を掴まれた。

「返事は?」

勇樹の手にしっかり掴まれながら、聖美は眉を下げる。

「木村君と、何故おつき合いしなきゃいけないのかわからない」

正直に言うと、勇樹の顔が少し困ったように見えた。

「えっと。俺が好きだからって理由じゃ駄目?」

「誰が?」

「だから、俺が」

「誰を?」

「だから、加藤を?」

そう言って、勇樹は聖美の腕を掴んだまま電車に乗った。乗ってから、聖美の顔を覗き込む。

「駄目?」

「駄目じゃないけど……」

特におつき合いするつもりもない、と言いかけ、勇樹の歓声に耳を塞いだ。
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