太陽と月の行進曲
『ヤバイ。マジだ』

『マジだわ』

『こりゃ、前途多難だな』

まわりの人間に口々に、そして冷静に言われて、勇樹は一同を睨み付ける。

『どういう意味だよ』

一人の女子が真面目な顔で頷く。クラスの副委員長だ。

『だって、相手は天然ポヤポヤお嬢様よ? あんたがそんなんだったら、一生気づかれないよ?』

勇樹は教室の外を眺めて顔をしかめた。

葉も落ちた木々が見えるほどに冬に近づいている。

クリスマスデートどころか、何の接点もないまま、そのクリスマスまで一ヶ月しかない。

現状のこのままでは、まず聖美が勇樹に気づくはずもない。
本当に一生気づいてもらえない可能性もある。

「クリスマスまでに、好きにさせてみせる!」

断言したまではいいが、どうする事も出来ずにいるうちに、クリスマスまであと数日になっていた。

決心したのは駅のホームでだった。

積もるまではいかない、軽い雪がふわふわと降っているホームに、聖美が改札を抜けて入ってきた。

その表情は楽しげで、今日ならいけるかもしれない。そう思った。

『もう駄目。俺死にそう』

小さな呟きを、要は聞き逃さなかった。

『また、恋に悩める青少年か?』

『……っるせ!!』

『言っちゃえ言っちゃえ。お前のターゲットはポヤポヤだ! 遠慮してたら意味ないぞ!』

はやし立てるまわりの一人に、持っていた缶コーヒーを渡し、勇樹は聖美の方へと歩いて行った。

それから───……









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