太陽と月の行進曲
「今日、電車すいてるね」

「え? ああー。あれじゃね? 受験とかで先輩達もいなくなったから」

見ると、スーツ姿のサラリーマンやOLらしき女性が大半を占めている。

電車に乗っている学生は、二人の同級生か、もしくは後輩達だった。

「ああ。そっか。それでか」

「たぶんそうだと思うぞ」

そう言って、窓の外を覗く。

「あ~……。また降ってきた」

ぼやくように言うと、聖美はゆっくりと小首を傾げて窓の外をみる。

細かい雪が降っていた。

「雪。嫌い?」

「ん~……。ガキの頃はそうでもなかったけど、今日は部活あんだよね。そうすっと体育館が寒くて寒くて、凍え死ぬ」

「ああ。そうかもしれないね」

聖美も窓を覗きながら、流れる灰色の町並みに降りしきる雪を見る。

勇樹は、その楽しげな横顔を眺め、くすっと笑った。

「お前。本当に雪が好きなんだな?」

「え?」

驚いたように聖美は振り返る。

「雪が、好きなんだろう?」

彼女は数回瞬きをして、ふわんと笑った。

「うん。好き」

ドキッとした。

自分に向けられた言葉ではないのを知っているが、それでも胸の奥が鳴った。
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