太陽と月の行進曲
奈々が要の魔の手を逃れ、お茶を差し出す彼からペットボトルを奪って飲み干す。

「仲良くなんかないわ!!」

涼しい顔で残りのパンを食べている要を指差し、眉を吊り上げた。

「こんなのは単なる腐れ縁よ! このエロ魔人の隣になったが運の尽きよ! だからクラスでは無視してたのに!!」

その言葉に、勇樹がちらっと笑顔の要を見た。

「エロ魔人?」

「俺も男の子だし?」

「や。清廉潔白そうで腹黒いのは知っていたが、そこまで言われるくらいエロだっけ?」

「さぁ? 女子からすれば、雑誌持ってるだけでもエロ魔人なんじゃないか?」

「それって普通だよな?」

「ああ。そうだよな?」

和やかに話す二人とは違って、奈々はワナワナと怒っている。聖美はそっと奈々の手をにぎった。

「珍しく怒ってるよ?」

やんわりとした口調の聖美に、奈々は大きく溜め息をつく。

「いろいろと大人の事情があるのよ」

「大人の事情?」

「幼馴染みの腐れ縁の事情というか……?」

「うん」

聖美が首を傾げた時、いきなり割って入ってきた人物がいた。

「どぅも!」

「どぅわ!!」

奈々が大仰に叫んで机に背中をぶつける。そのことの方に聖美が驚きながらも見上げると、関口がにこやかに立っていた。
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