太陽と月の行進曲
「クリスマスパーティーの実行委員です。よろしく」

そう言って、関口はにこやかに奈々と聖美に握手してくる。

「ああ? クリスマスの実行委員?」

勇樹が聖美たち後ろから、関口に低く声をかけた。

「うん。クラスの奴らでパーティーしようって事になって。結局、俺が実行委員と雑用係になっちゃってね」

「なんで、俺らがクラスのパーティーなんぞに出なきゃいけないんだよ」

「二人きりになるのは、その後でもいいだろう? どうせお前はバスケ部のパーティー出てからの話になるんだろうし、加藤さんだってその間は暇でしょ? 19時からなんだけど、どうかな?」

言われて聖美は瞬きをする。暇そうで暇じゃないとも言える。

勇樹のケーキを焼かなくてはならないし、出かけるのであれば家族の夕飯も用意してから出なくてはならない。

ちらっと横の奈々を見て、聖美は少し考えた。

いつも破天荒な奈々がとても大人しい。俯き加減の頬は少し赤い。

あ。そっか。奈々の様子に聖美は納得した。

奈々ちゃんは関口くんのことが好きなんだ。聖美にしては珍しく、女のカンが働いた。

「いいよ」

「えぇぇぇええ!?」

アッサリ聖美が頷くと、勇樹が後ろで悲愴な声をあげる。

それを振り返り、聖美はニッコリと微笑んだ。

「いいよね?」

奈々はこう見えて、けっこう奥手なところがある。

彼女は就職するといっていたから、進学組の関口と、来年一緒のクラスになれるかわからない。

ただ、就職組と進学組では、同じクラスになる確率は確実に低い。
それぞれまとめてクラスわけされる事は知っていた。

だったら、少し後押ししようと聖美は決めた。
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