太陽と月の行進曲
何故か真っ赤になっている奈々をポカンと眺め、聖美は首を傾げた。

弁当のエビフライを食べながら、そんな彼女を勇樹は眺める。

「聖美は、酒飲めんの?」

「え? 私?」

と、振り返る。

「そう、お前」

「ううん。あんまり飲んだことない」

ひな祭りに甘酒を飲むことはあるが、それ以外で“酒”と名のつくものは飲んだことはない。

勇樹は苦笑しながら頷いた。

「じゃ、飲むな。俺はバスケ部の方顔出したらすぐに向かうから。ちょっと顔出せば奴らも満足だろ?」

「かな?」

「で、ツリー見に行こうぜ。小学校の樹を使って、おっきなイルミネーションツリー作るんだと。町内会のおっさんが得意げにそう言ってた」

聖美は母校を思い出しながら小首を傾げた。

確かグラウンドに、大きな木が並んでいたはずだ。あれがイルミネーションになるのだろうか?

「へー」

「で、クリスマスプレゼント。なんにするか決めたか? もう日にちないんだけど?」

「うーん」

悩んだ末に、聖美は顔を上げる。

「ホワイトクリスマスがいい」

「はぁ!? おまっ……さすがの俺にもそんなん無理だって」

「じゃ、雪が降ればいい」

「お前ねぇ。俺に雨乞いならぬ、雪乞いしろって言うのか?」

情けなく聞こえたその言葉に、聖美は笑った。









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