太陽と月の行進曲
「うるっさい落ち着かないのがおサルで、静かで落ち着いてるのがあんた? まったく正反対な感じ? さながら太陽と月かな?」

「太陽と月?」

「ギラギラむやみに明るいのがおサルで、しっとり照らし出すのがあんた。私は月のほうが好きだけどね」

「詩人だねぇ、奈々ちゃん」

「ばか! そんなんじゃないって」

聖美は照れる奈々にふわっと微笑んだ。

「でも、真昼にも月は見えるよ」

「あんた……」

奈々は驚いたように聖美を見て、くすっと笑った。

「ちょっとはあのおサルのこと好きになった?」

「うん」

「あ~……。はいはい。のろけてくれちゃって。まったくもうだな」

そうやって笑いあっているうちに、電車は高校のある駅に着いた。

『ちぐさ』は、高校からちょっと中路を入った、本当に細い裏道の中にある。

「ここだよ」

奈々がそう言って、『ちぐさ』のドアを開ける。入るとすぐに衝立があって、中は見えない。

けれど、もう結構な人数が集まっているのは話し声で解った。

奈々が声をかけようと口を開きかけたとき、中から関口の声が聞こえてくる。

「にしても、本当に加藤が勇樹とつき合うとは思ってもみなかったなぁ」

その声に、聖美と奈々は無言で顔を見合わせた。
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