太陽と月の行進曲
太陽と月と私と彼
*****
「綺麗……」
呟いて、聖美は目の前の光景をぼんやり眺めていた。
涙はもうない。
タクシーに乗っている間は泣き通しで、運転手さんに飴玉をもらった。
ゴシック服の聖美は、年よりも子供に見えたらしい。
それから「元気を出すんだよ」と言う優しい言葉も頂けた。
世の中、まだまだ捨てたものじゃない。
そう思いつつ、小学校の前に立った。
記憶にあるよりもずっと低くて簡素な外壁。思っていたよりも狭い門。そこを無関心に眺めながら通りすぎ。フラフラとグラウンドに向かっていた。
何故、聖美が小学校に来たのか自分でも解っていない。
頭の片隅に、勇樹との約束があったのかもしれない。
それから体育館からグラウンドに、出入りするために設けられた小さな階段。そこに聖美は座って、簡素なイルミネーションを眺めていた。
小さな豆電球が、点在するだけの小学校の樹木。
先程までは子供を連れた親子連れもいたが、ほとんどの観客は小学生で、夜21時も過ぎればグラウンドには誰もいなくなった。
感覚の麻痺した身体で、ふっと目を瞑る。
微かに風の音と、遠くを走る車の音が響く。
それに交じって、人の足音がした。
「綺麗……」
呟いて、聖美は目の前の光景をぼんやり眺めていた。
涙はもうない。
タクシーに乗っている間は泣き通しで、運転手さんに飴玉をもらった。
ゴシック服の聖美は、年よりも子供に見えたらしい。
それから「元気を出すんだよ」と言う優しい言葉も頂けた。
世の中、まだまだ捨てたものじゃない。
そう思いつつ、小学校の前に立った。
記憶にあるよりもずっと低くて簡素な外壁。思っていたよりも狭い門。そこを無関心に眺めながら通りすぎ。フラフラとグラウンドに向かっていた。
何故、聖美が小学校に来たのか自分でも解っていない。
頭の片隅に、勇樹との約束があったのかもしれない。
それから体育館からグラウンドに、出入りするために設けられた小さな階段。そこに聖美は座って、簡素なイルミネーションを眺めていた。
小さな豆電球が、点在するだけの小学校の樹木。
先程までは子供を連れた親子連れもいたが、ほとんどの観客は小学生で、夜21時も過ぎればグラウンドには誰もいなくなった。
感覚の麻痺した身体で、ふっと目を瞑る。
微かに風の音と、遠くを走る車の音が響く。
それに交じって、人の足音がした。