太陽と月の行進曲
聖美が呟くと、勇樹の視線が、イルミネーションの高さから、自分の足元に落ちた。

「そっ! 初恋」

聖美は何故か自分が拳をにぎっていることに気がついて、汗をかいた手のひらを開いて慌ててコートになすりつける。

その手をそっと勇樹はつかんで、自分のジャケットのポケットに手をつないだまま入れた。

「その子が雪を見てるとき、楽しそうなのが好きなんだ。とっても幸せそうに笑ってるから……」

そう言って、勇樹は聖美を振り返る。

「だから、泣かないで欲しい」

勇樹の静かな瞳に、聖美の目から涙がこぼれた。

「ああ、もう。だから……」

困って慌てる勇樹に、聖美が泣きながら首を振った。それから泣きながら笑う。

「うれしい」

本当に嬉しい。

そう言うと、勇樹は一瞬目を瞑り、それから開いて微笑んだ。

「気付くまで、いろんな子とつき合った事はある」

「うん。奈々ちゃんから聞いてる」

「………お前、そこは聞かなかったフリをしろ」

「そうする」

頷くと手を離されて、抱きしめられる。

「だけど、俺が欲しかったのは、お前の笑った顔だったんだ」

ぎゅっと力をこめられて、聖美は小さくしゃくりあげた。

「私も好きだったみたい」

聖美の急な告白に、勇樹の手が一瞬硬直する。
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