太陽と月の行進曲
「いつから?」

「こないだ気がついた」

軽く咳をすると、そっと勇樹の身体が離れた。驚いたように顔を覗きこまれて聖美は微笑む。

「勇樹くん。いつも元気いっぱいに遊んでたから。いつも、見てたの」

「いつから?」

「わかんない。わかんないけど、いつも、見てたの」

勇樹はゆっくりと親指で聖美の涙を拭い、ふっと笑みを浮かべた。

「やべぇ。すっげぇ嬉しい」

「うん。私も嬉しい。だから、勇樹くんはいつまでも太陽でいてね?」

その言葉に、勇樹は空白になった。

聖美の言葉が、よく解らないというキョトンとした顔。

「奈々ちゃんがね、言ってたの。勇樹くんは太陽で、私は月なんだって」

「あー……」

勇樹は空を眺めて、苦笑した。

「あいつもたまにはいいこと言うな」

「うん?」

「じゃ、俺が笑ってる限り、お前は笑っててくれるってことかな?」

「へ?」

「だってさ、月って、太陽の光を浴びて、光ってるわけだろう?」

たぶん、違う意味でいったと思う。

そう思ったが、聖美は勇樹の言葉の方が気に入った。
< 79 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop