太陽と月の行進曲
「かわいい」

「それでよかった?」

「嬉しい!」

喜んで、聖美は「あっ」と思い出したように小さく呟いて眉を下げた。

「プレゼント。私どっかに落としてきちゃった」

申し訳なさそうな聖美に、勇樹はちょっとごしゃごしゃになった紙袋を見せる。

「これ?」

「それ! って、すごいぐちゃぐちゃ?」

「俺も、これ持って走ってたからなぁ」

中の箱を取り出して、開けてみる。

箱の中身を見て悲愴な顔の聖美に、勇樹は堪えきれずに吹きだした。

何の形かもわからない。クリームは箱のあちこちにこびりつき、飾ってあったのだろうサンタクロースが、白いだけのおじさんになっている。

辛うじて、スポンジケーキだというのが欠片から推測できるという有り様だ。

「も、もっと、ちゃんとしてたんだよ! こんな、原型もないわけじゃなかったんだよ!」

「大丈夫、大丈夫。食える食える」

そう言って、指でつまんだ小さな破片を聖美の口に入れた。

「な? ケーキを落としたわけじゃないんだから、全然平気だって」

「……甘い」

ちょっと涙目になりながら聖美は呟く。

「そうなのか?」

「うん。勇樹くん用に作ったから、けっこう甘いんだ」

「そっか」

勇樹は箱をしまうと、ニッコリと聖美に向き直った。

「じゃ、返してもらおうかな?」

「へ?」

言った瞬間に唇が重なった。
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