雪降る夜に教えてよ。
第一章
初雪
*****
朝、起きると音がなかった。
外を走る車の音、人が行き交う足音、そんな微かな音が消えていた。
肌を刺すような寒さに気付いて、暖かい温もりから目覚める。
秋元早苗、二十四歳。外資系企業のシステムヘルプデスクに勤める、ごくごく普通のOL。
この歳で『女史』と呼ばれる人間が、果たして普通なのかは微妙だけれど、それはスルーしていたりする。
彼氏いない歴も二十四年。
恋人と呼ばれる人を作ろうとは思わない。
そもそも、黒ぶち眼鏡なお堅いOLを口説こうとする人も滅多にいないし。
その代わりといっては何だけれど、高校時代からの友人の佳奈は、私の分まで恋愛に花を咲かせている。
パッと咲いては散ってを繰り返しながら。
カーテンを開けてから苦笑した。
眼下は一面真っ白い世界。どおりで音が少ないと思った。
雪国育ちだから、私はけっこう雪には慣れているけれど、こちらの人はそうもいかないだろうなぁ。
きっと大騒ぎするレベル。
バスはパスだな。電車もこの雪ではちょっと微妙。ちょっと歩くけど、地下鉄にしよう。
会社に遅刻しない為に、素早く時間を計算して身支度を始める。
朝はシャワーが基本。
じゃないと、指の間をスルスル滑り落ちる髪は、うまくまとまらない。
濡れたままの髪を拭きながら、コーヒーメーカーをセット。
朝食は食べないけれど、コーヒーは飲まないと頭が起きない。
それからテレビをつけ、化粧水を顔に叩き込みながら、朝特有の和やかなニュースを眺める。
積雪量と事故のニュースに顔をしかめ、コーヒーを飲み終わると、シンクにそのままカップを置いて洗面所に歯を磨きに行く。
ちらっとテレビの時計を見てから、灰色のパンツスーツに着替え、淡い色合いのリップをつける。これで用意は終了。
終了会社にパソコンが多いから、化粧しても汗で崩れるし。
きっちり編んだ三つ編みをクリップで頭に留めて、眼鏡をかける。
別に視力は悪くないけれど、これは自分を守るお守り代わり。
いつもより、かなり早めにマンションを出て地下鉄に向かった。
早い時間帯だからか構内は人もまばらで、部活の朝練でもあるのか、大きなバックを抱えたジャージ姿の高校生が目についた。
思わず若いなぁ……なんて思ってしまってから苦笑する。
十代にはかなわない。
手袋をつけなおし、マフラーを首にかけ、入って来た地下鉄に乗り込んだ。
朝、起きると音がなかった。
外を走る車の音、人が行き交う足音、そんな微かな音が消えていた。
肌を刺すような寒さに気付いて、暖かい温もりから目覚める。
秋元早苗、二十四歳。外資系企業のシステムヘルプデスクに勤める、ごくごく普通のOL。
この歳で『女史』と呼ばれる人間が、果たして普通なのかは微妙だけれど、それはスルーしていたりする。
彼氏いない歴も二十四年。
恋人と呼ばれる人を作ろうとは思わない。
そもそも、黒ぶち眼鏡なお堅いOLを口説こうとする人も滅多にいないし。
その代わりといっては何だけれど、高校時代からの友人の佳奈は、私の分まで恋愛に花を咲かせている。
パッと咲いては散ってを繰り返しながら。
カーテンを開けてから苦笑した。
眼下は一面真っ白い世界。どおりで音が少ないと思った。
雪国育ちだから、私はけっこう雪には慣れているけれど、こちらの人はそうもいかないだろうなぁ。
きっと大騒ぎするレベル。
バスはパスだな。電車もこの雪ではちょっと微妙。ちょっと歩くけど、地下鉄にしよう。
会社に遅刻しない為に、素早く時間を計算して身支度を始める。
朝はシャワーが基本。
じゃないと、指の間をスルスル滑り落ちる髪は、うまくまとまらない。
濡れたままの髪を拭きながら、コーヒーメーカーをセット。
朝食は食べないけれど、コーヒーは飲まないと頭が起きない。
それからテレビをつけ、化粧水を顔に叩き込みながら、朝特有の和やかなニュースを眺める。
積雪量と事故のニュースに顔をしかめ、コーヒーを飲み終わると、シンクにそのままカップを置いて洗面所に歯を磨きに行く。
ちらっとテレビの時計を見てから、灰色のパンツスーツに着替え、淡い色合いのリップをつける。これで用意は終了。
終了会社にパソコンが多いから、化粧しても汗で崩れるし。
きっちり編んだ三つ編みをクリップで頭に留めて、眼鏡をかける。
別に視力は悪くないけれど、これは自分を守るお守り代わり。
いつもより、かなり早めにマンションを出て地下鉄に向かった。
早い時間帯だからか構内は人もまばらで、部活の朝練でもあるのか、大きなバックを抱えたジャージ姿の高校生が目についた。
思わず若いなぁ……なんて思ってしまってから苦笑する。
十代にはかなわない。
手袋をつけなおし、マフラーを首にかけ、入って来た地下鉄に乗り込んだ。
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