雪降る夜に教えてよ。
***



そして飲み会の会場について、室長の音頭とともに乾杯がなされる。

賑やかな中、出来るだけ“お買い物組”のお姉さまたちから離れた席に陣取って、ウーロン茶を飲みながら眉を寄せた。

「シス管になってから飲み会が増えた気がします」

それはもちろん佳奈たちとの飲み会も含めての話だけれど、去年の今頃と比べると、確実に多くなっていると思う。

今年の夏はみんなで縁日にも行ったし、そこで佳奈たちには改めて桐生さんと付き合うことになった報告をして、昔話のついでに懐かしい名前が飛び出した。
ちょっぴり思い出に耽ったりもしたけれど、飲めない私が飲み会に行っても、やらかすだけだから微妙だと思うんだ。

ぼそっと呟いたら、桐生さんは片眉を上げ、早良さんは笑いだした。

「そもそも、ここに私はいなくても良いような気がします」

「や。そんなことはない。君が居てくれるおかげで、早良さんも近くにいてくれるし、風よけになる」

真面目に否定してくる桐生さんを眺めつつ、まわりを見回した。

確かに、ここにはシステムヘルプの面子で固められていて、早良さんも近づくお局様を見ては、「そんなに私と飲み競べしたいの~?」なんて言って追っ払っていたりする。

花見で潰された記憶のある人たちは、それで引き下がるんだからすごいと思う。

「モテる男って言うのも大変だねぇ」

目の前の浅井さんはそう言って、手酌でビールを注ぎ、美味しそうに飲み干した。

「秋元ちゃんがいないと桐生さんなんて人がいいから、すぐあっちに連れてかれるよ」

そう言って、お買い物組お姉様たちが集まるテーブルを指差す。

人がいいというか……桐生さんはきっと、実は私と似たような事なかれ主義なんでしょうよ。

「まぁ、僕は車だって言ってありますから、お酌しますって近寄って来ないだけマシかな。どうせ飲み会なら、どうでもいい人たちと飲むより、こちらにいた方が断然いいです」

笑う桐生さんを、唐揚げを食べていた棚橋さんはマジマジと見つめた。

「知らなかった。桐生マネージャーって、けっこう毒舌なんですね」

「僕は一応、紳士に育てられていますから」

しれっと言う事でもないと思うんだけどなー。

「最後まで紳士でいらしたらどうですか」

思わず呟くと、桐生さんは面白そうに私を見る。

「ま。そう言わずに、楽しく飲もうよ」

「飲んでいます!」

「ウーロン茶でしょ? もっと飲まないと」
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