雪降る夜に教えてよ。
食材を確認すると、レトルトの御飯に大根にジャガ芋、人参にトマト、茄子にパプリカ、ブロッコリーにキャベツ、それから鶏モモ肉に豚ロースが8枚。

この材料でいったい何を作ろうとしてたんだろう?

「こっちにはカレールーがあるよ」

桐生さんはチラッと目の前の食材を見て、眉をひそめた。

「確かに危険だねぇ」

いいや。佳奈。作れないことはない。作れないことはないけど、玉葱がないぞ!

と、心の中でツッコミを入れて溜め息をつく。

「冷蔵庫の中身は空。冷凍庫には賞味期限ギリギリのバターがあるが……いつのだ?」

冷蔵庫を確認している桐生さんが呟いて、私を振り返る。

うーん。作れないこともないけれど、玉葱ないと、ちょっと味変わるんだよなー。

「今から買い出しに行こうか?」

諦めたような桐生さんの声を聴きながら、戸棚を開けて調味料を確認する。

「いえ。たぶんいけるでしょう」

何となく納得していると、返ってきたのは綺麗な発音の英語だった。

「Are you sure?」

「マジですよ」

私は包丁を握ると、俄然トマトを刻み始める。

「俺も何か手伝う?」

「結構です」

「はいはい。君ってたいがい仕事与えると落ち着くよね」

「何かしてた方が、何も考えなくて済みますからね」

そのあとに桐生さんが呟いた言葉はよく聞き取れなかったけれど、なんだか変則的なラタトゥイユ仕立てのチキン煮込みと、豚ロースのバターソテー、ブロッコリーのサラダを作り上げた。

血だらけ大根は洗ったけれど、さすがに使いたくはないので、申し訳ないけど佳奈に持って帰ってもらおう。

「お前って本当に家事が得意だな」

感心している風の彼に、目を細めて苦笑する。

「暇な時は作りますもん。料理本とか買っても読まないし、なんとなく感覚で作っちゃって失敗することも多いですけど、普段はもっと手を抜きますよ」

「例えば?」

「お茶漬けの素のチャーハンとか、鍋料理も手抜き料理じゃないですか」

お鍋は切って入れればいいだけだし、ご飯とお茶漬けの素とフライパンがあれば簡単にできちゃうんだ。

「お茶漬けチャーハンって……なにそれ」

「ご飯をお茶漬けの素で炒めるんです。和風炒飯になりますよ」

「一種のジャンクフードか」

「創作料理と言ってください」

そう言って、お互い顔を合わせて笑っていると、レンジの音がして振り返る。

ご飯が温まったらしい。

それから私と桐生さんで、あの食材について、佳奈を質問攻めにしながら楽しい夕食にありついた。





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