雪降る夜に教えてよ。

残暑

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天気予報士は今年の残暑は長引くとのたまいながら、次々とお天気マップを指して行く。

そんなの知ってる。かなり暑いし。

パソコンで見ていたインターネットニュース番組の画面を消して、疲れたように息を吐きだす。

本当に暑いのは苦手。何年経っても、立っているだけで汗だくになるのには慣れない。

お昼休み。今日は早良さんがお休みらしく、桐生さんもミーティングで席を外していて、気がついたら十三時は四十分になっていた。

給湯室の冷凍庫から“早良”と書かれたアイスクリームをちょっと失敬して、今に至る。

仕事がてんてこ舞いと言う訳でもないんだけど、単にキリがいいところまでってやっていたら時間が過ぎていたという。けっこうよくある話。

「また君は……昼に行かなかったのか？」

顔を上げると、少しだけ困ったような表情の桐生さんが戻ってきた。

溜め息混じりに歩いて、自分のデスクに書類とファイルを置く。

「秋元さん。遅れてもいいから、昼休憩はしっかりと取ってください。僕が鬼上司みたいじゃないですか」

「今後は気をつけます」

けれど……なんだか桐生さん、不機嫌そうだなぁ。

「桐生さん。何かありました？」

そう言うと、彼は片眉を上げて苦笑した。

「判るかい？」

「とても」

彼はまた大きな溜め息をつくと、少しのびてきた髪をかきあげる。

「秋元さん。フォーマルな服って持っているかい？」

フォーマルって、何が……あ。

「噂の親睦会に行くことに決まったんですね？」

「そういうこと。参るよ、これから忙しくなるのに」

えー。おフランス料理とか、興味がないわけじゃないけれどやっぱり嫌だ。

「私も同行しなければならないんですか？」

「受け取った資料とか、書類の整理を一人でやれって言うの？」

「おフランスは苦手ですし、ほらマナーもちゃんと知っているわけじゃないですから、恥をかいちゃうのも問題ですし」

「俺だって、四六時中愛想笑いは苦手なんだけど」

軽く睨まれて、静かにパソコンに向き直った。あなたが不機嫌な理由は主にそれですか。