雪降る夜に教えてよ。
「異性関係できびきび対応する、さなちゃんなんて想像つかないよぅ」

「や。でも、それじゃいけない気がするんだ」

本当に最近はいろいろと考えちゃうからさ。佳奈はそんな私に向かって、心底不思議そうに首を傾げる。

「私はそれでいいんだと思うよ? だから桐生さんも、ちゃんと見ていてくれるんでしょう?」

「でも……ほら、なんて言うか」

やっぱり、桐生さんも男性ですし。
早良さんには散々“中学生交際中”とか言われるし。

言い淀んでいたら、佳奈はふわっと微笑んだ。

「セクシャルなことを言っているんなら、十代の男の子でもあるまいし、それが全てじゃないでしょう?」

「そ、そうなのかな」

最近は女性雑誌も読むようになった。

だから、その手の恋愛事情の記事も読んでいるんだけれど、けっこう当たり前な風潮があるような気がしてならない。

「心が通じたら身体をくっつけるのが“当たり前”なんて考える男は、まだまだお子様よ。確かに大切な事でもあるんだろうけど、女心は複雑でデリケートなの。そこは解ってもらわなくちゃ」

確かにいろいろと複雑ではあるんだけれど、男の人の心理なんて全然理解できないし。

でも、恋多き佳奈から言われると、なんとなく納得できてしまうから怖い。

「そ、そう?」

「初めてなら、それこそ未知との遭遇でしょう? 大丈夫。そのうち、身体と心が合わさるから。きっと自然に」

納得したようなしてないような。

うーん。でも……ちょっと待って?

「あんたなんで私が……」

「初めてでしょう?」

佳奈はケロッと言って笑った。

それはそうなんだけど! 確かに未経験ですが!

「そんなん、見てればわかるじゃない~」

見ていれば判るものなの!?

「さなちゃんは一度も男の人と付き合ったことないじゃない? それで実は“経験済み”なんですって言われる方がびっくりだよぉ。だから、佳奈はさなちゃんの相手が桐生さんでよかったと思うよ?」

うん。私も……ちょっと思う。
けど、それはそれでなんだか複雑。

しょんぼりしていたら、佳奈は真面目な顔をして指を振った。

「桐生さんはちゃんと見てくれてる。けどね、さなちゃん?」

「ん?」

「言葉も大事よ。さなちゃんはただでさえ、無口なんだから」

つまりはちゃんと意思表示もしろという事?

「……わかった」

佳奈はふわりと笑う。

ただ、私はあまり深くは考えてはいなかった……。











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