雪降る夜に教えてよ。
『……それは、僕が五才かそこらの話でしょう』

桐生さんが涼しい顔であしらっていると、ルイ氏は困ったように大げさに眉を下げて私を振り返る。

『聞いてくれサナエ。今はこうやってクールなユキだが、私の車に爆竹は仕掛ける、廊下をワックスまみれにする、ひどい悪戯っ子だったんだぞ』

『悪戯っ子は今も健在かと思われますが……』

相変わらず人のパソコンのメール着信音は勝手に変えるし、いつも就業前にチェックするのが日課になりつつありますから。

考えていたら、何故か驚いたように無言で見下ろされていた。

あれ、私……何か変なことを言った?

ルイ氏は唐突に何かに納得したように桐生さんの肩を叩いて何か言う。

……けれど、その言葉はあまりにも早口な聞き慣れない言語だったのでちんぷんかんぷん。

ただ、桐生さんは片眉を上げて肩を竦めるだけだった。

何? なんて言ったの?

キョロキョロしてる私に、ルイ氏が右手を差し出してくる。

『来週、私の家でパーティーをするのだが、サナエも来てくれないか?』

『私がですか?』

『ちょうどユキのバースデーだし、内輪だけで楽しもうと思ってね』

や。内輪のパーティーって、それなら、尚更行けないですけど!

でも、あれ?

「……誕生日?」

「俺の二十九歳の誕生日」

桐生さんは清々しい笑みで小首を傾げた。

「……知らなかった」

「だと思った。と言う訳で出席しようか?」

日本語で会話する私たちを、ルイ氏はニコニコと眺めている。

「え。それってまた場違いになるんじゃ?」

「心配しないで、俺がどうにかするから。ルイ。とりあえず出席の方向で。どうせ俺の誕生日はついでなんだろうけど」

桐生さんはにこやかにルイ氏にさっさと返事をしてしまい……。

『では、来週の土曜日に』

満天の笑みで言うルイ氏に、なんとも言えずに頷くしかなかった。










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